○甘い○
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#JUMPで妄想
薮宏太/八乙女光
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甘い
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薮宏太
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「宏太?勉強中?」
『ん?ああ…どうした?』
幼なじみ、同い年。昔から変わらない優しさはきっと母親譲り。
〇〇が俺の部屋のドアから顔を覗かせる。
「勉強、一緒にしないかなって?」
『いいよ。あ、甘い匂い。』
「うん、さっきまで作ってたの。食べる?」
〇〇がジップロックに詰まったお菓子たちを出してくれる。
俺はリビングから飲み物と2人専用のコップを取りに行く。
『オレンジジュースで良かった?』
「うん!ありがとう!」
その笑顔はお父さん譲りだ。そんな事を思う。
『今年のバレンタインは決まったの?』
「宏太はどれが一番美味しかった?」
ここ1週間、〇〇が今年配るお菓子の試食会状態で。
毎日のように〇〇が美味しいお菓子を作ってくれる。
俺のため、ってわけじゃないけど。
『俺は…トリュフとマドレーヌかな?』
「じゃあその2つの詰め合わせにする!」
決まった!って言いながら教科書を開く。
俺も一緒にノートを開く。
『あ、チョコついてる』
「え?どこ?とって!」
困った顔して俺の方を見つめてくるから、ティッシュ片手に手を伸ばす。
『ほい、じゃあ勉強しようか。』
〇〇の頭をぽんっと1度。頬を赤くしたその様子が誰よりも可愛い。
だからこの手はきっと、〇〇のためだけのもの。
「宏太の手、日に日に大きくなるね」
『そうか?』
「うん、安心する。」
微笑みが優しくて、俺の心は荒れ模様。好きなんて苦しい。
今年のバレンタインは本命が貰えるのだろうか、今年は〇〇から。
そんな事を考えながら、俺はシャーペンをノックする。
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『…なにこれ』
「作ったの、それだけ!」
幼なじみが俺の部屋を訪れる。いつも通りの言葉たちと動作と。
押し付けられた焼き菓子の容器。開くと甘い香りを俺の部屋に漂わせる。
『…甘い』
1口齧ると、バニラの甘い味が口いっぱいに広がる。
俺は心がきゅっとする感覚を気付かないふり。
{もう、光!ちゃんとお礼言ったの?}
『…趣味の延長だろ、俺に渡すのも。』
部屋に入ってきた母親が飲み物ついでにあてつけを残していく。
俺だって、もう少し素直になりたいと思う。
でも、素直に生きられるようには育ってない。
"美味かったよ"
LINEを送る。これが俺の精一杯の素直。
"嘘つき。甘いの嫌いでしょ😡"
〇〇からの返信に俺は吹き出しそうになる。
1人、部屋の中でにやにやしてしまうから、困ってしまう。
"俺でも食べれたよ"
可愛げのある返事は薮に聞けばいいやとか、
そういう事を思いながら可愛くない返事を送る。
"また明日、持ってくかも"
どうせまた、この部屋に何も言わずに来るのだろう。
その時はいつもと違う言葉で迎えられるだろうか。
『……甘いな。』
もう一口、もう一口を繰り返すとすべて食べきってしまう。
"また待ってるよ"
そのままiPhoneを手放して、教科書に手を伸ばす。
きっと、既読がついているであろうLINE。返信は来ない。
もし、彼女になっていたとしたら、この後も返信は来るのだろうか。
そうこうしていれば3時間は過ぎていた。
『……甘いもの、食べてーな。』
食べ終わった空の容器を持って部屋を出る。
流しで洗って、拭きあげて、家を出る。
まだ余ってたら、また貰ってこよう。
そうしたら、少しは話せるのか?そんな期待をする。
…fin