○B.A.B.Y.→髙木雄也○

 

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#JUMPで妄想


#Album_m_m

 

(DEAR.初回限定盤1)


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「ふふ…ほーら。」

 

俺の手から取り上げられた携帯。
ニコニコしてる〇〇が俺の顔を覗き込む。

 

近づいた顔が俺の唇を奪う。そのまま啄むように続く。俺が押し返そうとしても、今度は首に腕が回る。舌がねじ込まれる。男なのに、抵抗できない。

 

「好きでしょ?こういうの。」

 

『嫌いって言っても、聞かねーだろ。』

 

そんな事、言っちゃってもいいの?なんて妖艶な表情を見せる。一方的な片想いもここまでくれば潔い気さえする。

 

「ねぇ…ここ行きたいの。」

 

俺のスマホ指紋認証、俺の指を勝手に使って開けた携帯。画面には青く光る世界。

 

『こういうの、興味あった?』

 

「雄也は海しか興味無いもんね?」

 

俺の質問なんて聞いてないような返事。
何も言い返さずに携帯をスクロールする。

 

「行こうよ。」

 

『いいけど…え、今から?』

 

いいでしょ?って俺が弱いって知ってるであろう、下から見つめあげる〇〇の必殺技をここぞとばかりに使ってくる。


断る余裕もない俺は、コートを手に取る。
〇〇も俺の部屋なのに、半分は〇〇の部屋のようになったリビングからコートとスヌードを探してくる。

 

『服、減らせないの?』

 

「雄也が少ない分、私でバランス取らないとね?」

 

自分の家に帰れば、とたまに言いたくなる。
振り回すだけ振り回されている俺の気も知らないで。車に乗れば、案の定、目的地までは眠り続ける〇〇。


俺はカーナビに指示されて、初めての目的地へと車を走らせる。

 

『…本命に連れてってもらえよ。』

 

うっかり本音が口から漏れていく。

 

「……仕方ないじゃん、夜は奥さんと子供が待ってるんだから」

 

返ってきた言葉はいつもより弱々しくて、苦しくて。ちらっと〇〇の方を見れば、閉じていたはずの目を開けている。窓の外の景色を見つめるその姿に孤独を感じる。

 

『そのまま俺の家に不法滞在かよ。』

 

「言い方に語弊があるでしょ。雄也だって嫌じゃないくせに。」

 

手は出せない…出さないし、キスもハグも俺からはなし。〇〇がしたくなった時だけ。でも、キスまでしかしない。半殺しのような毎日にも慣れ始めた俺は男として間違っているのか。

 

『どこがいいの、あいつの。』

 

「……私に興味無いくせに抱いてくれるところ?」

 

強がって言うそのセリフがいつもより〇〇を可愛く健気にする。

 

「雄也は私の事、好きだからね。丁度良いのよ。」

 

『なんもバランス取れてねーよ。』

 

「でも、私の事、拒まないでしょ?」

 

赤信号、俺の唇に〇〇の唇が重なる。青になれば自然と離れていく〇〇。このまま止まっていたい。そう思いながらもアクセルを踏む。

 

「……光さんと来たかったな。」

 

『悪かったな、俺で。』

 

無理に微笑んで、雄也でもよかったけどねって言われる。その言葉の棘と毒が俺の心を惑わせていく。

 

「…また来ようかな。」

 

その相手が俺とも限らないのに、勝手に満足する、そんな世界が続く。

 

…fin